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義仲館
2022年4月9日 20:30
「敵の義仲勢は戦意が高く勇猛でしたが、やはり我らより兵の数が少ないと思われます。敵方の先頭部隊は、我らを全滅するつもりで追撃を掛けて来ました。これは少しでも兵力差を縮め、我ら平氏方の兵を減らそうとする行為に間違い無いと思われるためです。」越中前司平盛俊[平氏の家人]が、そう報告すると、「ふむ。忠度どの[清盛の末の弟]の予測していた通り、やはり義仲勢は全軍で四、五万騎、と言うところだろうな
2022年4月10日 20:30
「敵義仲勢の先頭部隊を発見しました!この先の羽丹生に白い旗が!おそらく陣を構えているものと思われます!」郎等の報告を受けた平氏方追討軍大手の総大将平維盛が、馬上から進行方向に目をやると、確かにこれから向かいつつある方向に源氏を示す白い旗が三十本程立っていて、風に翻っているのが見えた。「義仲勢も砥波山系に入って来たいたのか」呟く様に総大将維盛が言うと、「敵義仲勢の先頭部隊の後方や
2022年4月11日 20:30
「はっ?・・・えっ?」「いや・・あの・・もう一度、言って下さい」石黒光弘と宮崎長康が訊き返した。石黒などは耳に手を当てて義仲の言葉を聴き逃すまい、としている。そんな二人を面白そうに見ていた義仲が、先程と同じ言葉を繰り返した。「精強な兵を十五騎集めてくれ」と。「・・・・・」「・・たった・・十五騎で・・一体、何を・・」石黒が絶句し、宮崎が辛うじて訊き返した時、「義仲
2022年4月12日 20:30
先程までの勝利の歓喜による喧騒が嘘の様に、静まり返った義仲勢本陣にあって、最初に発言したのは、やはり義仲その人であった。「他に報告は?」と。動じずに。普段通り穏やかに。「はい!有ります!第一軍大将落合兼行どのからは、行家どのは討たせません!第一軍、第二軍の総力を持って志雄山方面の戦線は維持させてみせます!と!」郎等が続けて報告した。「そうか。御苦労だった」義仲は伝令の郎
2022年4月13日 20:30
実に立派な馬であった。正に竜蹄[りょうてい。極めて優れた馬の事]と形容するのに相応しい陸奥産の駿馬である。「陸奥の藤原秀衡どのより、戦勝を祝って義仲様に駿馬を献上する、との事です」四天王筆頭、樋口兼光が報告した。義仲勢約五万騎の軍勢は、砥浪山方面倶利伽羅峠で、平氏方追討軍大手の軍勢に大勝利、その直後、志雄山方面で平氏方追討軍搦手の軍勢にも勝利した。実に般若野、倶利伽羅、志雄と三つの会