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義仲館
2022年2月20日 20:30
彼は自分に課していた。決して自分からは攻めない事を。そしてそれが楽な道では無い事も知っていた。後手に回る事の不利を。しかし知力を働かせ、準備を怠らなければ、主導権を取れる事も知っていた。だから彼の戦いは常に受け身であった。可能な限り戦さを避けたかったのである。彼はそれが、正しい、と思ってやっていた訳ではない。彼はそうする事を選んだ。だが、選んだ、と言うよりも彼はそうしたかったの
2022年4月16日 20:30
彼は馬上から、戦さの様子を見ていた。彼はそんな自分が大好きである。戦場をある程度見渡せる場所で戦いを見ていたが、今はどうやら味方が押されている。勢いが無くなって来た。と、ここまで考えて小さく溜息をつく。(やはり味方は負けそうじゃのう)今日は朝から源平両軍が激突した。源氏にとってはどうか知らぬが、平家にとってはこの戦さ、勝たなければ北陸戦線の最後の戦いになるであろう事は間違い無い。
2022年5月18日 20:30
五騎の一角が崩れた。先頭を駆けていた家包の馬に矢が命中し、乗っていた家包もろとも馬が横様に倒れたのである。「私に構わず行って下さい!」家包はよろけながらも直ぐに立ち上がると、駆け続けている四騎に叫んだ。義仲・兼平・巴・光盛は、家包に目礼を送り返答とした。と、「私は上野の多胡次郎家包!私を討ち取り手柄にするが良い!」家包は叫びつつ太刀を振り翳して敵に斬り掛かって行った。だ