マガジンのカバー画像

義仲戦記

47
第1期(本編) 2022年3月27日より、毎日20:30に更新!5月19日に完結しました。 第2期(外伝) 2022年8月14日より不定期更新しています。 源平盛衰記と玉葉をベ…
運営しているクリエイター

#義仲戦記

義仲戦記2「横田河原合戦」1181年6月

義仲戦記2「横田河原合戦」1181年6月

 美しい夜であった。空は澄み渡り、一片の雲も無く、全天に星が瞬いている。冬の冴えた空気を吸い込みながら彼は、星を観ていた。一晩中、空を見上げて今夜でもう四日目になるが、彼は飽かずに星を観ている。

 それは五日前の事。驚くべき報せがもたらされた。都で平家の総帥平清盛が、今月の二月四日、遂に亡くなったというのである。この清盛死去の報が入った日から、彼大夫坊覚明は依田城のある小高い山の上から、夜に星を

もっとみる
義仲戦記3「北陸へ…」1181年6月

義仲戦記3「北陸へ…」1181年6月

 何度でも言う。勝った。と言うか大勝利であった。
しかもこの合戦での勝利は、ただ単に戦さに勝った、という事実以上の意味があったのである。
 この横田河原の合戦での義仲勢大勝利、という現実のインパクトは日本全体を揺るがした。特に北陸諸国、越後[新潟県]はもとより、越中[富山県]、能登[石川県]、加賀[石川県]、越前[福井県]の五カ国において、その影響は甚大であった。

 それまでこの国[日本]での、

もっとみる
義仲戦記5「燧ケ城築城」1181年X月

義仲戦記5「燧ケ城築城」1181年X月

「稲津どのーーーっ!」

呼ばれて顔を上げた稲津新介実澄[越前の中心的存在の武将]は、川の下流の方から馬を駆けさせて来る武将に向かい、手を挙げて応えた。

「藤島どの!下流の堰の方はどうでしたか?」

「大丈夫だ!順調に水が溜まっている!」

藤島右衛門尉助延[越前の武将]は新介の横に馬を付けながら笑顔で答えた。

「完成したのですね!」
新介も笑顔で言うと、

「そうだ!遂に出来たんだ!我らの城

もっとみる
義仲戦記6「頼朝信濃侵攻」1183年3月

義仲戦記6「頼朝信濃侵攻」1183年3月

↑ テーマソング「夜明けの将軍」

「それはいけません!義仲様」

一歩も退かない気持ちで今井四郎兼平が言った。

「兼平の申す通りです。殿。
これは我らにとって好機なのです。頼朝とはいつか必ず雌雄を決する時が来たでしょう。それが少し早まっただけの事です。迷う事はありません」

大夫坊覚明も強い口調で言う。

「第一、義仲様は敵の頼朝勢を信濃[長野県]の奥深くに誘い込む為に、ここ熊坂山[長野、新潟

もっとみる
義仲戦記8「燧ケ城合戦」1183年4月

義仲戦記8「燧ケ城合戦」1183年4月

「嘘だろ・・・
 そんな筈が・・・何故?・・」

誰かが呟いた。

稲津新介実澄、斎藤太
[越前の武将]
林六郎光明、富樫入道仏誓
[加賀の武将]
宮崎長康、石黒光弘[越中の武将]
仁科次郎盛家、落合五郎兼行
[信濃の武将]
ら北陸と信濃の武将達は
今、目の前で起きている事が理解出来無かった。茫然としていたのである。

だが、これは戦さなのだ。
何もしないで放心している暇など無い。しかし彼等は、そ

もっとみる