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義仲ものがたり

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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の進度に合わせて公開していく、義仲館オリジナル義仲ストーリー。600か所以上に及ぶ伝承地をふまえた独自の展開をお楽しみください。 〇合戦を中心に語る… もっと読む
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#平安時代末期

義仲ものがたり #10

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

 信濃源氏・長瀬義員は木曽義仲の幼なじみであり、少々頼りない所もあるが信頼される家臣の一人である。
 義仲は長野市で初戦・市原の合戦に勝ち、次の戦の相手は越後国の城氏ではないかと見当をつけている。そのため兵力拡大を目指し亡き父の家臣がいた上野国への進出を検討していたところ、信濃国へ義仲への伝令がひとつもないまま甲斐国から武田・一条の軍勢が侵入した。その上義仲と均

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義仲ものがたり #9

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■前回までのあらすじ
 木曽義仲は木曽谷で育ち、諏訪社、上田・佐久平の滋野一族、安曇野の仁科氏らと結び勢力を広げていた。平家政権下でも信濃国はその影響を受けることなく平穏な日々が続いていた。
 しかし以仁王の挙兵をきっかけに状況は一変、平家をかさに笠原頼直(中野市)が挙兵を画策、義仲はそれに備えて、綿密に計画を練り、善光寺平での市原の合戦に勝利した。
 千曲川を

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義仲ものがたり 第5話

義仲ものがたり 第5話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■第4話のあらすじ
 頼朝が伊豆で北条氏と平氏に与する武士たちに敵対心を持ち、挙兵のタイミングをうかがっていたころ、信濃国では安曇郡の仁科氏が建立した仏像の開眼供養で国中の武士が集まり盛り上がっていた。義仲も招かれており、小県郡に住む妻・海野の姉様やその親族・滋野一族と久しぶりに再会した。行事が終わり、共に小県に向かっていたところ、善光寺と関り深い武士・栗田氏の

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義仲ものがたり 第4話

義仲ものがたり 第4話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■これまでのお話
 俺・長瀬義員は木曽義仲様のご近所にして幼なじみ。元服前に鉢盛山でお互い馬を走らせていて偶然出会った。義仲様にはそれがとても印象深かったらしく、信頼を置いてくれている。
 諏訪社大祝・金刺盛澄や滋野一族の海野の姉様、信濃源氏の依田氏に応援され、義仲様の勢力は拡大中!
 そして時は、治承3年(1179)

 「おーい!こっちこっち!」

 義仲様

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義仲ものがたり 第3話

義仲ものがたり 第3話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

大祝 金刺盛澄神域って不思議だよなーって思う。
歴史の古い神社に来ると特に強く感じる。
背筋が伸びるような清々しい空気が漂っているのだ。

とはいえ、今日は、清々しいを突破した、ピリピリした痛いぐらいの空気になってるけども。

俺、長瀬義員は信濃国一ノ宮諏訪社にやってきた。
小県郡から和田峠を超え、眼下に青く輝く諏訪湖が見えてきたときは無性にウキウキした気分にな

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義仲ものがたり 第二話

義仲ものがたり 第二話

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の進度に合わせて、木曽義仲軍勢の「その時」を伝承をもとにストーリー仕立てでお届けする企画です。

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

俺は長瀬義員。義仲様の遠い親戚で、ご近所さんだ。結構信頼されてるのかなとは思ってるけど、だからと言って修羅場にご同行はごめん被りたい…けど断れずに、すごすご義仲様のお世継ぎの顔を見に、巴殿と三人で月夜の下を歩いているところだ。

■前回ま

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義仲ものがたり 第一話

義仲ものがたり 第一話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

瀧にうたれる男滝にうたれている男がいる。
歳のころは20歳に満たないぐらいだろうか。
がっしりとした肩に流れは絶え間なくそそぎ、無数の水飛沫が太陽の光を反射してまぶしい。
男の表情は清流の壁に阻まれて見えないが、
たくましい背中からは、迷いのない信念が伝わってくる。

その背中を木陰からひっそりと覗いていたのは長瀬義員だ。
信濃国筑摩郡の南のはずれに所領を持つ信

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