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義仲ものがたり

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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の進度に合わせて公開していく、義仲館オリジナル義仲ストーリー。600か所以上に及ぶ伝承地をふまえた独自の展開をお楽しみください。 〇合戦を中心に語る… もっと読む
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#平家物語

義仲ものがたり #10

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

 信濃源氏・長瀬義員は木曽義仲の幼なじみであり、少々頼りない所もあるが信頼される家臣の一人である。
 義仲は長野市で初戦・市原の合戦に勝ち、次の戦の相手は越後国の城氏ではないかと見当をつけている。そのため兵力拡大を目指し亡き父の家臣がいた上野国への進出を検討していたところ、信濃国へ義仲への伝令がひとつもないまま甲斐国から武田・一条の軍勢が侵入した。その上義仲と均

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義仲ものがたり #9

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■前回までのあらすじ
 木曽義仲は木曽谷で育ち、諏訪社、上田・佐久平の滋野一族、安曇野の仁科氏らと結び勢力を広げていた。平家政権下でも信濃国はその影響を受けることなく平穏な日々が続いていた。
 しかし以仁王の挙兵をきっかけに状況は一変、平家をかさに笠原頼直(中野市)が挙兵を画策、義仲はそれに備えて、綿密に計画を練り、善光寺平での市原の合戦に勝利した。
 千曲川を

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義仲ものがたり #8

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■前回までのあらすじ
長瀬義員は源氏の血を引く信濃源氏。とはいえ義仲とははるかに遠い親戚だ。元服前に鉢盛山で馬を駆けていて偶然出会った長瀬を義仲は信頼し、気に入っている。義仲が小県郡依田に城を構えるにあたり、長瀬は現場責任者として依田に入り、時は流れた。
1180年以仁王の令旨をきっかけに、戦乱の世が幕を開けた。長く平穏が続いていた信濃国でも笠原平五頼直が善光寺

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義仲戦記1「市原合戦」1180年9月

義仲戦記1「市原合戦」1180年9月

彼は自分に課していた。

決して自分からは攻めない事を。
そしてそれが楽な道では無い事も知っていた。

後手に回る事の不利を。

しかし知力を働かせ、準備を怠らなければ、主導権を取れる事も知っていた。だから彼の戦いは常に受け身であった。可能な限り戦さを避けたかったのである。
彼はそれが、正しい、と思ってやっていた訳ではない。彼はそうする事を選んだ。

だが、選んだ、と言うよりも彼はそうしたかったの

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行家ものがたり①1180年4月

(いよいよワシが大活躍する時が来たようじゃ!)

 彼は一人で盛り上がっている。久し振りに。
 無理も無い。今から約二十年前に都で戦さがあり、彼の属していた源氏方は大敗北した。この戦いを平治の乱と呼ぶ。そして総大将の源義朝[頼朝の父]が討たれた後、彼は各地を逃げ回り紀州熊野[和歌山県熊野]に隠れ棲んでいたのである。つまり彼はこの二十年は何もしていなかったのと同じであった。

 だが彼は自分自身の事

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義仲ものがたり#6

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■これまでのお話
善光寺が燃えた。巴は義仲の妻・海野の姉様や長瀬、楯ら義仲の部下たちと善光寺平に向かった。手塚光盛も加わり、千曲川の河原で被災した人々に熊汁をふるまった。巴は姉様のふるまいをみて、自分の未熟さに愕然とする。
■主な登場人物
木曽義仲…のちに大将軍になる信濃の武士。現在26歳。
巴…女武将として名を残すことになるが、まだ少女。
長瀬義員…義仲の旧友

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義仲ものがたり 第5話

義仲ものがたり 第5話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■第4話のあらすじ
 頼朝が伊豆で北条氏と平氏に与する武士たちに敵対心を持ち、挙兵のタイミングをうかがっていたころ、信濃国では安曇郡の仁科氏が建立した仏像の開眼供養で国中の武士が集まり盛り上がっていた。義仲も招かれており、小県郡に住む妻・海野の姉様やその親族・滋野一族と久しぶりに再会した。行事が終わり、共に小県に向かっていたところ、善光寺と関り深い武士・栗田氏の

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義仲ものがたり 第4話

義仲ものがたり 第4話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

■これまでのお話
 俺・長瀬義員は木曽義仲様のご近所にして幼なじみ。元服前に鉢盛山でお互い馬を走らせていて偶然出会った。義仲様にはそれがとても印象深かったらしく、信頼を置いてくれている。
 諏訪社大祝・金刺盛澄や滋野一族の海野の姉様、信濃源氏の依田氏に応援され、義仲様の勢力は拡大中!
 そして時は、治承3年(1179)

 「おーい!こっちこっち!」

 義仲様

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義仲ものがたり 第3話

義仲ものがたり 第3話

~信濃源氏・長瀬義員が見た義仲~

大祝 金刺盛澄神域って不思議だよなーって思う。
歴史の古い神社に来ると特に強く感じる。
背筋が伸びるような清々しい空気が漂っているのだ。

とはいえ、今日は、清々しいを突破した、ピリピリした痛いぐらいの空気になってるけども。

俺、長瀬義員は信濃国一ノ宮諏訪社にやってきた。
小県郡から和田峠を超え、眼下に青く輝く諏訪湖が見えてきたときは無性にウキウキした気分にな

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